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参禅会だより

令和7年10月26日

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 冷気を帯びた乾いた風が境内を抜けると、ススキの穂は揺れ、枯葉は地を這うように滑っていく、その様は秋の風が「色なき風」といわれるように、一抹の寂寥感を感ぜずにはいられません。

 

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 そんな侘しさを感じさせる季節になりましたが、本日はあいにくの空模様で、数日前から居座り続けるぐずついた天気の中での坐禅会となりました。こと坐禅に関しては、先月よりは好坐禅のコンディションといえるかもしれませんが、雨による冷え込みが厳しいせいか、いささか肌寒さを感じながらの坐禅となりました。しかしながら猛暑・残暑の頃と比較すると、「水を得た魚」という言葉があるように、道元禅師のいうところの「水清うして地に徹し、魚行いて魚に似たり。空闊うして天に透る、鳥飛んで鳥の如し」の心境、つまり魚や鳥のように、自由自在に水中を泳ぎまわり空を飛ぶような心持ちで、坐禅に臨むことができたのではないでしょうか。
 坐禅後は、本日で10回目となる『禮拜得髄』の巻の講義が行われました。本日の講義は、先月同様「女人なんの咎があるか、男子なんの徳があるか」についての続きになります。講義の中で方丈は、道元禅師が批判した唐の國の愚痴僧の言葉に焦点を当て、「嫡嫡相承」の重要性とその難しさについて話しをされました。そして更に「加上説」及び新約聖書ルカ傳にある譬え話「放蕩息子の帰郷」を参考に、いかに「才」があっても、自身の得た「知」を喧伝するために、大切な教えの根幹を改変するような行為は、やがて寛容の精神を失い、排他的な考えを助長することになりかねないとして、警鐘を鳴らされました。
 講義後は、茶話会を行い、連絡事項等を伝達した後、散会となりました。

 

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令和7年9月28日

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 山門の両脇には、鮮やかに花開いた彼岸花が連なり、それはまるで本堂へいざなう燈火のように、訪れた人を出迎えてくれます。本日はお彼岸明けの最初の日曜日です。「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉に違はず、夏の暑さもひと区切りつき、ようやく秋の訪れを実感できる季節となりました。おそらく身も心も幾分軽くなったような気がするのは私だけではないでしょう。

 

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 涼しくなったとはいえ、躰を動かすとまだ汗ばんでしまうこの日、坐禅堂にて心静かに脚を組むと、日頃の喧騒も何処へやら、心地よい没入感を得た気分になります。まさに好坐禅の時期が到来したといっても過言ではないでしょう。
 坐禅後は、本日で9回目となる『禮拜得髄』の巻の講義が行われました。本日の講義は、「女人なんの咎があるか、男子なんの徳があるか」について記された箇所になります。講義の中で方丈は、修行を盾にして異性をはなから拒絶する行為は、人間として人類の半分との関係を失うことになると話されました。人は誰かと関わりながら生きている、人だけでなく様々なモノにも依存しながら仕事をし生活をしている。にもかかわらず、「人は膨大なモノに依存していくうちに、何にも依存していないかのように錯覚し、それを『自立』だと勘違いしてしまうのだ」という内容の話しを、脳性麻痺の当事者であり医師でもある熊谷晋一郎さんの体験を引用しながら話され、他者との関わりの大切さについて繰り返し述べられました。
 講義後は、茶話会を行い、連絡事項等を伝達した他、参禅会の会報『明珠84号』の完成を報告し、散会となりました。

 

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令和7年6月22日

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 梅雨入りをしてからというもの、まとまった雨は全然なく、反対に肌を刺すような日差しが照り付け、まるで真夏のような日が続くこの日、月例の坐禅会が行われました。

 

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 前月の坐禅会では、ホトトギスのさえずり声がにぎやかに聴こえてきましたが、本日は暑さで元気がないのか鳥達は鳴りを潜め、代わりに風によって擦れる木々の音が静寂の坐禅堂に伝わって来ます。そういった自然の声も、耳を澄まして心静かに聴けば、心のざわつきを鎮めるはたらきのあるものとして尊くも感じられます。まさに「すなわちこれ広長舌(佛さまのお説法)」と感ぜずにはいられません。

 坐禅後は、本日で6回目となる『禮拜得髄』の巻の講義が行われました。講義前には、参禅会会員の髙間治基さまから尺八の演奏を奉納していただきました。

 本日の講義は、画一的な考えでもって物事を捉えてはいけない、という箇所の総括となる話しで、前月に引き続き「多様性を受け入れることの重要性」について講義をされました。その中で方丈は、アイルランドの『ジャガイモ飢饉』を例に話しを進められました。これは、多様性を無視して「特定の品種のジャガイモのみ」を栽培し続けたことによって起こった歴史上の悲劇で、「多様性の重要性」「個性の重要性」を繰り返し述べられました。

 講義後は、茶話会を行い、連絡事項等を伝達し、無事散会という運びとなりました。

令和7年8月24日

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 お盆の期間も終わり、暦の上でも二十四節気でいう所の「処暑」を過ぎたこの日、月例の坐禅会が行われました。24日は、仏教行事でいう所の「地蔵盆」の日にあたり、名実ともにお盆関連の祭礼の最後を飾る日となります。ですので、本来ならば暑さもやわらぎすごしやすくなるはずですが、年々暑くなる気候変動の影響からか、予想に反せず猛烈な猛暑の日となりました。

 

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 坐禅堂では、エアコンの作動音が低く聞こえる他、屋外からはミンミンゼミの鳴声が、広い境内を音でリレーするかのようにここかしこから聞こえてきます。そしてたまに鳴き止むと、その一瞬だけ堂内の静寂をひときわ際立たせていました。
 坐禅後は、本日で8回目となる『禮拜得髄』の巻の講義が行われました。本日の講義は、前回同様「佛法を重んずべきこと」を強調した箇所の続きになります。講義では、阿羅漢や善知識といった存在が、余人を以って代え難い者であると説明され、その理解を深めるために方丈は、稲垣栄洋さんの著作を引用し、「ナンバー1」か「オンリー1」か?についての話しをされました。上記については、『ガウゼの法則』を引き合いに出し、自然界の生き物は「ナンバー1」になれる「オンリー1」の場所を見つけることで生き続けて来たと話し、佛道に志す者も、善き指導者にめぐり会い、その心や教えを深く求める気持ちがあれば、おのずとナンバー1になれるオンリー1の場所を見つけ、そこに貪名愛利の者たちの犯すこのできない一座を同志とともに建立することができる、といった話しをされました。
 講義後は、茶話会を行い、連絡事項等を伝達した他、先日発売された椎名宏雄東堂老師の新著『従容録に学ぶ』の紹介と同書籍の参加者への贈呈を行い、散会となりました

 

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 ※東堂老師の新著『従容録に学ぶ』は当寺院で販売はしておりません。お求めの方は書店またはネットでのご購入をお願いいたします。

令和7年6月1日

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 新緑もゆる6月の朔日、午前中は毎月恒例の自由参禅を行い、午後からは年に一度の一日攝心を実施しました。まさにこの日、当院にとっては坐禅三昧の一日となりました。午前中はあいにくの空模様で気温も低く肌寒く感じられましたが、午後からは日差しが差し込み春らしい陽気が回復し、好坐禅の日となりました。

 

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 一日攝心は、一炷目の坐禅を午後12時40分から開始し、じ後計四炷の坐禅を行いました。参加者の中には、午前中の自由参禅から参加している猛者も複数名見られ、一日攝心のみの参加者も含めて、おのおの至福のひと時を過ごし、身心を整えられたことと思います。

 坐禅後は、『月舟和尚夜話』をテキストに、方丈による講義が小一時間行われました。その中で方丈は、『夜話』の中にある「初発心の時が一番肝要だ」という言葉を引き合いに出し、その気持ちを持続させることが重要だと話されました。何故なら、初めて決心した時の気持ちが最も強固であり熱量も大きい、将棋で喩えるなら対戦を前にした初期配置の布陣が一番強固なのと似ている。でも勝つためには、それを崩しながらも一手づつ前に進まなければならない、修行もそれと同じであると述べられました。人間一つの物事に取り組み続けると、経験値が上がり、やがてそこから「慣れ」が生じてきます。その慣れから来る心の油断が「初発心」の思いをどんどんと削り取っていくのだとし、普段から隙を作らず、人生の節目節目に己の「初発心」を省み、熱量を衰えさせないことが大切であると述べて講義を締めくくられました。

 

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令和7年7月27日

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 梅雨の期間中まとまった雨が降る日は稀でしたが、梅雨明けしてからというもの、連日うだるような暑さが続き、これがあと一ヶ月いやニヶ月続くのかと考えると「ゾッとする」と感じるのは私だけではないでしょう。そのような中、暦の上では「大暑」の期間に該当し、朝から猛暑日にせまる勢いの今日、常の如くに月例の坐禅会が行われました。

 

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 坐禅堂は、参加者の体調を考慮しエアコンを作動させているわけですが、ここだけは外と違って別天地のような心地よさを感じます。そのような環境で坐禅のひと時を過ごすと、あと十数日で「立秋」とうのもあながち嘘でないことを実感させられます。

 坐禅後は、本日で7回目となる『禮拜得髄』の巻の講義が行われました。本日の講義は、「権威や地位を重んずるのではなく、佛法を重んずべきこと」を述べた箇所になります。講義中、方丈は社会心理学の「権威への服従原理」を参考に、人がいかに権威や肩書に影響を受け易いかを説明し警鐘を鳴らすとともに、権威や地位とは無縁の優れた指導者を探し出しそれに師事することの重要性を話されました。特に「メトロノームの同期現象」の話しを端緒に、人間も複数人が同じ目標を保持して集中力を高めれば、脳波や心拍数が同期して良い方向へ導かれることになると述べられ、佛教でも特にそのきっかけとなる優れた指導者(得法の者:佛法の教えを深く理解した者)の存在はとても重要なんだということを話されました。

 講義後は、茶話会を行い、連絡事項等を伝達し、無事散会という運びとなりました。

 

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令和7年5月25日

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 雨脚は去ったものの、前日からのぐずついた天気により、いまだパッとしない空模様のこの日、5月の月例坐禅会が行われました。

 

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 坐禅堂に入って心を落ち着かせると、本日はホトトギスの声が繰り返し聴こえてきます。「キョッ・キョッ・キョ・キョ・キョ・キョ」と繰り返し鳴くホトトギスの声は、日本では夏の訪れを告げるもの、あるいは農作業の開始を告げるものとして、古来より親しまれてきました。よってこの故事が念頭にあるせいか、坐禅堂で聴いたホトトギスの第一声が、「坐禅の開始を告げる鳴らし物」のように聴こえたのは私だけではないかもしれません。
 坐禅後は、本日で5回目となる『禮拜得髄』の巻の講義が行われました。今日のメインとなる話しは、「妙信尼さんと十七人の僧侶」のエピソードの回になります。今回の講義で方丈は、妙信尼さんの話しを踏まえ、人材を登用する際の「多様性を受け入れること」の重要性を話され、やがてそれがイノベーションを起こし、持続可能な社会をつくる原動力になるのだ、ということを述べられました。
 講義後は、常の如く茶話会を行い、無事散会という運びとなりました。

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