令和元年七月定例参禅会報告 プリント

今月の提唱

『正法眼藏』「海印三昧」の巻(6)

img_1880-1.jpgたとひ千尺万尺の糸綸を巻舒せしむとも、うらむらくはこれ直下垂なることを。いはゆる前面・後面は、我於海面なり。前頭・後頭といはんがごとし。前頭・後頭といふは、頭上安頭なり。海中は有人にあらず、我於海は世人の住処にあらず、聖人の愛処にあらず、我於ひとり海中にあり。これ唯常の宣説なり。この海中は、中間に属せず、内外に属せず、鎮常在説法華経なり。東西南北に不居なりといへども、満船空載月明帰なり。この実帰は、便帰来なり。たれかこれを滞水の行履なりといはん、ただ仏道の剤限に現成するのみなり。これを印水の印とす。さらに道取す、印空の印なり。さらに道取す、印泥の印なり。印水の印、かならずしも印海の印にはあらず、向上さらに印海の印なるべし。これを海印といひ、水印といひ、泥印といひ、心印といふなり。心印を単伝して、印水し、印泥し、印空するなり。
曹山元証大師、因僧問、承教有言、大海不宿死屍。如何是海。師云、包含万有。僧云、為什麼不宿死屍。師云、絶気者不著。僧云、既是包含万有、為什麼絶気者不著。師云、万有非其功絶気。
この曹山は、雲居の兄弟なり。洞山の宗旨、このところに正的なり。いま承教有言といふは、仏祖正教なり。凡聖の教にあらず、附仏法の小教にあらず。


今月の所感

img_1881-1.jpg今月のご提唱は、前月の最後に三昧とは、「背手摸枕子の夜間なり」(寝ている時に手を後ろに廻して外れた枕を本能的に手探りするような状態)とか、「我於海中、唯常宣説妙法華経なり」(海の中でひたすら妙法華経を説く)のようなものであるといわれた「我於海中、唯常宣説妙法華経」について、詳しく拈提されているところです。因みにこの語句は『妙法蓮華經』「提婆達多品」第十二巻で文殊師利が述べられている語句です。
道元禅師は「我於海中、唯常宣説妙法華経」を拈提するにあたっては、船子德誠の偈と石頭希遷の『草庵歌』を巧みに引用しておられます。
船子德誠は薬山惟儼の法嗣で、会昌の破仏に遇って秀州(浙江省)華亭県の川のほとりで小舟を浮かべて船頭をしていました。往来の人を渡して、縁に従い機に応じて法を説いていたので、華亭の船子和尚と呼ばれていました。船で往来の人を渡しながら、船子和尚の法を嗣ぐ人を待っていたのですが、なかなかふさわしい人が現れませんでした。待てど暮らせど法を嗣にふさわしい人が来ない時に、船子德誠は泰然自若として次のような偈を読まれたのです。
三十年來坐釣臺、釣頭往往得黃能。金鱗不遇空勞力、收取絲綸歸去來。
千尺絲綸直下垂、一波纔動萬波隨。夜靜水寒魚不食、滿舡空載月明歸。
道元禅師はこの偈の下四句のうちの三句を引用されています。
因みに、船子德誠の法は兄弟弟子の道吾円智に紹介された夾山善会が嗣ぐことになり、その直後に船子和尚は自ら乗っていた船を沈めて命を絶ったのです(詳しくは『永平広録』巻八 法語0008をご覧ください)。
また石頭希遷の『草庵歌』からは、
住庵人、鎮常在。不屬中間與內外。世人住處我不住、世人愛處我不愛。
問此庵、壞不壞。壞與不壞主元在。不居南北與東西、基上堅牢以為最。
の上の四句と下の句の一句を引用されています。
img_1877-1.jpgところで「我於海中、唯常宣説妙法華経」については、海中に千尺あるいは万尺もあるような釣り糸を垂らし、それを巻いたり伸ばしたりしていると、釣り糸のわずかに動きで一つの波が起こり、またそれに従って沢山の波が動いてくる。その波は常に『法華経』を説いており、前の波だけでなく後ろの波も沢山動いて『法華経』を説いていると、道元さんは述べています(この部分は前月の提唱の部分です)。
「我於海中」とあるように、海は世人の住む処ところではないので、我ひとりが海中で『法華経』を宣説している。我が住む海中では、東西南北という人が決めた世界などには留まることはなく、また船子和尚が魚を釣ることが出来なくても一向に気にすることなく、船一杯に月の明かりを載せて悠々と自分の家に帰っていったような、大自然の中に帰ってゆく心境こそが、三昧の境地であると述べられています。
また道元禅師はこのような境地は、仏道にかかわる極限において実現するもので、その心境は水をもって象徴したり、空をもって象徴したり、さらに言えば泥をもって象徴することもできる。だが、さらにそれを超えてゆけば海をもって象徴する境地に至るであろう。これを海印というのだと仰られています。
そして最後の締めくくりとして、海印は水印ともいい、泥印ともいい、結局は心印という。その心印を直々に伝えて、水の姿を現し、泥まみれの姿を現し、空と同じような姿を現して、我々は日常生活を送っていくのだと道元禅師は述べられています。
ここまでが「海印三昧」の巻の前半部分となり、後半は曹山本寂禅師と僧との大海と死屍に関する問答から始まります。この問答については、来月にご老師からご提唱をいただくことになっています。

刑部年番幹事からのお知らせ

・8月16日(金)に施食会大法要があります。お手伝いされる方は午前8時半に集合してください。午前中は役員接遇と本堂の飾り付け。午後は本堂で参列者対応、駐車場で参列者の車対応、役員接遇です。終了は午後5時です。現在お手伝いくださる方は現在13名です。

小畑代表幹事からのお知らせ

・施食会のお手伝いよろしくお願いいたします。昼食と夕食が出ます。
・ご老師の後継者となられる明石直之師が8月1日からお見えになります。来月の参禅会には参加される予定です。


ご老師からのお知らせ

・雷おこしの創始者が泉の古川家から出ています。
・明石直之さんは8月1日から任務に就きます。明石さんについては『龍泉院だより』71号をご覧ください。

今月の司会者 齋藤 正好
今月の参加者 28名
来月の参加者 市川 洋介



最終更新日 ( 2019/07/31 水曜日 09:13:35 JST )
 
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