平成二九年七月定例参禅会報告 プリント

今月の提唱

『正法眼蔵』「看經」の巻(8)

img_9399.jpg-1.jpg看経をはりぬれば、もとの盤、もしは函をもちて、座のまへをすぐれば、大衆おのおの経を安ず。とるとき、おくとき、ともに合掌するなり。とるときは、まづ合掌して、のちにとる。おくときは、まづ経を安じて、のちに合掌す。そののち、おのおの合掌して、低聲に回向するなり。
もし常住公界の看経には、都鑑寺僧、焼香・礼拝・巡堂・俵銭、みな施主のごとし。手爐をささぐる事も、施主のごとし。もし衆僧の中に施主となりて、大衆の看経を請するも、俗施主のごとし。焼香・礼拝・巡堂・俵銭等あり。知客これをひく事、俗施主のごとくなるべし。
聖節の看経といふ事あり。しかれば今上の聖誕の仮令、もし正月十五日なれば、まず十二月十五日より聖節の看経はじまる。今日上堂なし。仏殿の釈迦仏のまへに、連床を二行にしく。いはゆる東西にあひむかへて、おのおの南北行にしく。東西牀のまへに臺盤をたつ。そのうへに経を安ず。金剛般若経・仁王経・法華経・最勝王経・金光明経等なり。堂裏の僧を一日に幾僧と請して、斎前に點心をおこなふ。或は麺一椀、羮一杯を毎僧に行ず。或は饅頭六七箇、羮一分、毎僧に行ずるなり。饅頭、これも椀にもれり、はしをそへたり、かひをそへず。おこなふときは、看経の座につきながら座をうごかずしておこなふ。點心は、経を安ぜる臺盤に安排せり、さらに棹子をきたせる事なし。行點心のあひだ、経は臺盤に安ぜり。點心おこなひをはりぬれば、僧おのおの座をたちて、漱口して、かへりて座につく。すなはち看経す。粥罷より斎時にいたるまで看経す。斎時三下鼓響に座をたつ。今日の看経は、斎時をかぎりとせり。
はじむる日より、建祝聖道場の牌を、仏殿の正面の東の簷頭にかく、黄牌なり。また仏殿のうちの正面の東の柱に祝聖の旨趣を障子牌にかきてかく、これ黄牌なり。住持人の名字は、紅紙、あるひは白紙にかく。その二字を小片紙にかきて、牌面の年月日の下頭に貼せり。かくのごとく看経して、その御降誕の日にいたるに、住持人上堂し、祝聖するなり。これ古来の例なり、いまにふりざるところなり。
また僧のみづから発心して看経するあり。寺院もとより公界の看経堂あり。かの堂につきて看経するなり。その儀、いま清規のごとし。
高祖薬山弘道大師、問高沙彌云、汝従看経得、従請益得。高沙彌云、不従看経得、亦不従請益得。師云、大有人不看経不請益為什麼不得。高沙彌云、不道他無、只是他不肯承当。
〈高祖薬山弘道大師、高沙彌に問うて云く、汝看経より得るや、請益より得るや。高沙彌云く、看経より得たるにあらず、また請益より得たるにあらず。師云く、大いに人有りて看経せず、請益せず、什麼としてか得ざる。高沙彌云く、他無しとは道わず、只是他の肯て承当せざるのみ。〉
仏祖の屋裏に承当あり、不承当ありといへども、看経請益は、家常の調度なり。
正法眼蔵看経第三十
爾時仁治二年辛丑秋九月十五日、在雍州宇治縣興聖寶林寺示衆。


今月の所感

img_9391.jpg-1.jpg平成28年11月から始まった「看経」の巻のご提唱も今月で最終回を迎えました。今月の「看経」の巻では、皇帝の誕生日を祝う聖節の時の看経について事細かに述べられていました。日本では天皇の誕生日に看経を行ったことは余り聞いたことがありません。また権力に近づくことを嫌った道元禅師も、積極的に天皇の聖節を祝っての看経や上堂を行ったようには思えません(あやふやな知識で断定することはできないので、一度きちんと調べます)。
聖節の看経は聖誕日の一ヶ月前から始まります。看経を行うのは堂内ではなく仏殿で行います。まずご本尊の釋迦牟尼佛の前に。長い床台二列を東西に向かい合わせて、南北に敷きます。床台の前に机を置き、その上にお経を安置します。お経は金剛般若経・仁王経・法華経・最勝王経・金光明経等です。
雲堂内の僧から一日に何人かずつ招いて、昼食の時まで看経を行いますが、看経も長時間に及ぶと体力を消耗しますので、点心を取ることができるようになっています。点心としては、麺一椀か吸物一杯などです。あるいは饅頭六、七個に吸物少々の場合もあります。点心をいただいた後は、席を立って嗽をしますが、嗽といっても、我々が風邪をひいた時にうがい薬でガラガラパッと行うのとは違い、口に水を含んで静かに口内をすすぐのです。
点心が済めばまた看経に移り、お昼を知らせる太鼓が三度なるまでつづけます。
聖節の看経が始まる日には、「建祝聖道場」と記した黄色の牌を仏殿の東の軒先に掛けます。因みに中国では黄色は聖なる色とされています。皇帝の服装は黄色ですし、経典類も正式には黄色の紙に印刷されます。
聖節の看経が始まり、一ヶ月経った聖節当日は、住持は上堂して祝聖の意を述べます。これを祝聖上堂といい、住持の語録集には記録されています。
img_9394.jpg-1.jpg「看経」の巻の最後に薬山惟儼禅師と法嗣の高沙彌との問答が引かれています。
薬山が高沙彌に「お前は経を読んで得るところがあったか、また師に教えられてこれぞと導かれたところがあったか」と質問した。
高沙彌は「経から得るところはありませんでした、また師から教えられるところもありません」と答えた。
それを聞いた薬山は「偉いことを云うもんだ、経を看ず、師の教えによっても導かれずに、仏法を会得するというのか。ではどうしてお前は覚っていないのか」と問うた。
高沙彌は「そういう人が他に一人もいないとは云いません。ただ私は経典や師の教えを自ら肯首し会得することはしないのです」と答えた。
道元禅師は、仏法を会得した人の中には高沙彌のような人もいるかもしれないが、経を看ることと師の導きとは、修行者にとって常に必需品である、と「看経」の巻を結んでおられます。


清水さんからのお知らせ

・東京国立博物館では、日タイ修好130周年特別展「タイ ~仏の国の輝き~」展が7月4日(火)~8月27日(日)まで開催されています。本展では仏教国タイについて、タイ族前史の古代国家、タイ黎明期のスコータイ朝、国際交易国家アユタヤー朝、現王朝のラタナコーシン朝における仏教美術の名品を通じて、同国の歴史と文化を紹介しています。

     「タイ ~仏の国の輝き~」展はこちら>>

小畑代表幹事からのお知らせ

・8月16日(水)に龍泉院の施食会が行われます。お手伝いいただくことは本堂の飾付、駐車場の整理、総代さんの接待などです。お手伝いくださる方は8時半までにお越しください。

ご老師からのお知らせ

img_9396.jpg-1.jpg・施食会のお手伝いはひとつの行になると思います。初めての方も積極的に参加してください。
・先々週の金曜日に4人の方が、参禅会の資料等が収納されている大悲澱の納戸の整理に当たられ、すっかりきれいに整頓されました。
・納戸の整理で出てきた「口宣」などの冊子類は自由にお持ち帰りください。
・本棚の中には1000冊ほどの書籍が収蔵されています。どなたでも利用できます。借り出した場合は次の参禅会の時に返却してください。
・今、坐禅ブームと言われています。坐禅普及委員会では坐禅体験会を積極的に弘める活動をしていますが、皆様のまわりのグループや団体等にも「坐禅体験会をやらないか」と声をかけて下さい。

今月の司会者 中嶌 宏誠
今月の参加者 34名(新人1名)
来月の司会者 五十嵐嗣郎

最終更新日 ( 2018/04/30 月曜日 10:14:27 JST )
 
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