令和二年二月定例参禅会報告 プリント

今月の提唱


『正法眼藏』「空華」の巻(5)


img_2742-1.jpgいま凡夫の学者、おほくは陽気のすめるところこれ空ならんとおもひ、日月星辰のかかれるところを空ならんとおもへるによりて、假令すらくは空華といはんは、この清気のなかに浮雲のことくして、飛華の風にふかれて東西しおよひ昇降するかことくなる、彩色のいてきたらんするを、空華といはんするとおもへり。能造所造の四大、あはせて器世間の諸法、ならひに本覺本性等を空華といふとは、ことにしらさるなり。また諸法によりて能造の四大等ありとしらす、諸法によりて器世間は住法位なりとしらす、器世間によりて諸法ありとばかり知見するなり。眼瞖によりて空華ありとのみ覺了して、空華によりて眼瞖あらしむる道理を覺了せさるなり。
しるへし佛道の瞖人といふは、本覺人なり、妙覺人なり、諸佛人なり、三界人なり、佛向上人なり。おろかに瞖を妄法なりとして、このほかに眞法ありと学することなかれ。しかあらんは小量の見なり。瞖華もし妄法ならんは、これを妄法と邪執する、能作所作、みな妄法なるへし。ともに妄法ならんかこときは、道理の成立すへきなし。


今月の所感


img_2738-1.jpg2月の定例参禅会は令和初の天皇誕生日と重なりました。世の中は新型コロナウイルスの脅威にさらされており、なるべく人の集まるイベントは自粛するとのことで、皇居での天皇の誕生を祝福する一般参賀は中止となりました。
新型コロナウイルスだけでなく花粉症の猛威も揮っていることから、参禅会に来山された方もマスクを着用されている人が多く見受けられました。
受付で「坐禅中はマスクをしていても構いませんか」との問い合わせが多くありました。修行道場ではマスクの着用が許されているかどうかはわかりませんが、不安な気持ちで坐っても落ち着かないだろうと思い、「マスクはOKです」と答えました。

ご老師が上梓された『沼南の宗教文化誌』(たけしま出版)が全員に配布されました。この本は、ご老師が沼南町や柏市の刊行物に寄稿された記事の中から、郷土史や宗教文化方面の文献を抜粋し、再編したものです。柏・沼南の文化史を知る上で大変貴重な一冊だと思います。なお、今月のご老師の口宣はICレコーダーの不調により、録音することができませんでした。ご了承ください。

今月の「空華」の巻の最初に、一般の仏道を学んでいる人達は、空華とは清らかな大気の中に、浮雲のように漂って、風に吹かれてあちこちにさまよい、昇ったり降りたりするような彩色のあるものと受け取っているのだろうと述べられていますが、我々凡人は空華とはまさにそのようなものだと思っています。
しかし道元禅師は、空華とはそのようなふわふわと浮ついた、幻みたいなものではないと示されています。即ち、造るものと造られるものとしての四大(地水火風)とか、山河・大地・草木などの自然界のあらゆるものごととか、あるいは本覚・本性とか、それらのことを空華というのだと述べられているのです。
img_2740-1.jpgさらに、このようなことは凡夫の学者には全く気が付かないことであるとも示されていますが、確かに四大とか本覚・本性までが空華とは、我々には想像もできないところです。
ここで「器世間」という言葉が出てきますが、これは自然界のあらゆるものごとという意味です。ご老師は世親の著した『倶舎論』に、器世間のことが詳しく述べられていると仰られていました。
独特の空華観に続いて、凡夫は全てのものごとの存在することによって、造るものとしての四大(地水火風)等が存在するということを知らない。またすべてのものごとの存在することによって、山河・大地・草木等の自然界が存在することを知らない。凡夫はただ自然界が存在するからすべてのものごとも存在するとばかり考えている、と道元禅師独特の存在観が述べられています。我々の存在観は一面からしか見ていないと喝破されているのですが、この辺りは哲学的にも深いものを感じます。
このような存在観しか持てない凡夫は、眼がかすむから空華があらわれると考えても、空華があるからこそ眼にかすみがかかるのだ、という道理をわかるはずがないと道元禅師は述べられています。
さらに仏道では眼病の人は本来覚った人であり、仏と等しいさとりを得た人であり、諸仏にひとしい人であり、三界を知る人であり、仏を超えてゆく人であると述べられています。
このことを愚かにも眼病の人の眼のかすむことを偽りのものであり、この他に真実の法があると学んではならない、それは少量の考え方であるとも述べられています。
このように仏教上、眼病の人がさとりを得た人であるとか、眼の病いでかすんで見える空華が真実を表しているなどは、凡夫の凡庸な考えではとてもおよびつかないところです。少しでも道元禅師の空華観や存在観に近づくためには、相当坐り抜く必要がありそうです。


五十嵐年番幹事からのお知らせ

・弁栄展が令和2年2月28日(金)~6月21日(日)の午前9時から午後5時まで、柏市郷土展示室(沼南庁舎2F)で開催されます。龍泉院からも弁栄上人ゆかりの品が数点出展されますので、是非ご覧ください。(新型コロナウイルスの猛威で弁栄展は開催が延期となりました)
     弁栄展のご案内はこちら>>
・名札のない方には坂牧さんにお願いして名札を用意いたします。

清水坐禅普及委員からのお知らせ

・令和2年3月13日(金)~5月10日(日)まで東京国立博物館で「法隆寺金堂壁画と百済観音」が開催されます。

小畑代表幹事からのお知らせ

・弁栄上人と龍泉院とは深い因縁があります。是非弁栄展をご覧ください。

ご老師からのお知らせ

・『沼南の宗教文化誌』は40代から50代の忙しい時期に書いたものを編集したものです。鎌田茂雄先生が「忙しいものほど仕事ができる、閑なものほど仕事ができない」と言われたので、忙しい合間を縫って沼南町や柏市の刊行物に寄稿しましたが、今になって思えばよいことをしたと思います。

今月の司会者 門脇   弘
今月の参加者 28名
来月の参加者 近江 礼子

最終更新日 ( 2020/03/07 土曜日 10:35:17 JST )
 
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