平成三〇年三月定例参禅会報告 プリント

今月の提唱

『正法眼蔵』「(後)心不可得」の巻(8)

img_0659.jpg-1.jpg小乗の三藏すべて國師の功徳の所在みるべからずと、一向ならふべきなり。たとひもし國師さきの両度は所在をしらるといへども、第三度にしらざらんは、三分に両分の能あらん、叱すべきにあらず。たとひ叱すとも全分虧闕にあらず。これを叱せんたれか國師を信ぜん。意趣は、三蔵すべていまだ佛法の身心あらざることを叱せしなり。五位の尊宿すべて國師の行李をしらざるによりて、かくのごとくの不是あり。
このゆゑにいま佛道の心不可得をきかしむるなり。この一法を通ずることえざらんともがら、自餘の法を通ぜりといはんこと信じがたしといへども、古先もかくのごとく将錯就錯ありとしるべし。
あるとき、僧ありて國師にとふ、いかにあらんかこれ古佛心。國師いはく、牆壁瓦礫。これも心不可得なり。
あるとき僧ありて國師にとふ、いかにあらんかこれ諸佛常住心。國師いはく、幸遇老僧參内。これも不可得の心を參究するなり。
天帝釋あるとき國師にとふ、いかにしてか有爲を解脱せん。國師いはく、天子修道して有爲を解脱すべし。
天帝釋かさねてとふ、いかならんかこれ道。國師いはく、造次心是道。
天帝釋いはく、いかならんかこれ造次心。國師ゆびをもてさしていはく、這箇是般若臺、那箇是眞珠網。天帝釋礼拜す。
おほよそ佛道に身心を談ずること、佛佛祖祖の會におほし。ともにこれを参學せんことは、
凡夫賢聖の念慮知覺にあらず。心不可得を參究すべし。
正法眼藏心不可得
仁治二年辛丑夏安居日、書于興聖寶林寺。


今月の所感

img_0645.jpg-1.jpg昨年の八月から始まった「(後)心不可得」巻のご提唱も今月で円成しました。「(後)心不可得」の巻の最初は、『金剛経』の大家と自認していた徳山宣鑑和尚が、餅売りの婆さんに、「金剛経には過去心不可得、現在心不可得、未来心不可得があると聞きましたが、今、あなた様はどの心で餅を食べたいとと思っているのですか」と質問され、徳山は茫然として答えることができなかった故事が紹介されていました。
次に、大證國師がインドから来た大耳三藏に、「わしは今どこにいるのか」と三度尋ねたところ、三藏はいい加減な答えを二度までしたものの、三度目の時にはついに答えることができなかった故事が取り上げられていました。
大證國師の「わしは今どこにいるのか」という問は、物理的にどこどこにいるのかを尋ねているのではなく、「わしの本来の面目はどこにあるのか」を尋ねていることを、大耳三藏は理解できていなかったからなのです。道元禅師は、大證國師の問の意趣を理解できなかったのは、大耳三藏だけでなく、趙州和尚や玄沙和尚などの五位の尊宿も実は理解していなかったと指摘されています。これは佛道の心不可得をしっかりとわきまえていないことによるものだと、道元禅師は拈提されたいます。
今月の提唱の中では、大證國師についてはいくつかのエピソードが紹介されていました。
問う、「如何にあらんかこれ古佛心」。曰く、「牆壁瓦礫」。(これは有名な問答です)
問う、「如何にあらんかこれ諸佛常住心」。曰く、「幸遇老僧參内」。
問う、「いかにしてか有爲を解脱せん」。曰く、「修道して有爲を解脱すべし」。
問う、「いかならんかこれ道」。曰く、「造次心是道」。
問う、「いかならんかこれ造次心」。曰く、「這箇是般若臺、那箇是眞珠網」。
最後に、佛道の身心を参学することは、凡夫賢聖の念慮知覺にあらずと述べられ、佛道の身心は思慮分別の及ばない世界である。だから心不可得を徹底的に參究すべしと結ばれています。

img_0665.jpg-1.jpgところで、ご老師は今回の「(後)心不可得」のご提唱の中で、大乘の精神の主柱である利他と、その対極にあると思われている自利について、次のようなお話をされました。
大乗仏教では利他と自利とは両極に位置するものではないと、鈴木大拙は説いているのです。人間は自利の塊ではあるが、そればかりではない。利他という本性も備えているのである。即ち大智(自利)あるところに大悲(利他)あり。例えば、弱いものを見ると本能的に救いたいと行動することが、それを物語っている。奈良康明先生も「仏教における慈悲のこころ」の中で、「智慧(自利)と慈悲(利他)は共に育てられる」と書いておられます。
ご老師のお話しをお聞きして、自利を一概に否定するのではなく、自利を利他に活かすように心掛けて行くことが大切なことだと思った次第です。


刑部・五十嵐坐禅普及委員からのお知らせ

・海上自衛隊下総システム通信分遣隊から、3月20日(火)と22日(木)の午前9時から11時半まで、それぞれ17名の方が坐禅体験会をなされました。小畑代表の挨拶、五十嵐から坐り方の説明の後、坐禅堂で二炷坐り、その後ご老師からご法話を頂きました。

小畑代表幹事からのお知らせ

・『明珠』69号が発行されました。編集委員の方はご苦労様でした。
・4月8日(日)午後2時から降誕会が行われます。配役の方は午後1時までに集合してください。現在の参加予定者は11名です。


ご老師からのお知らせ

・坐蒲が5個用意しています。購入ご希望の方はお知らせください。
・来月の定例参禅会は午前8時半から坐禅指導があります。また茶話会の後には筍堀がありますので、筍堀の用意をしてきてください。

今月の司会者 河本 健治
今月の参加者 31名
来月の司会者 山川 進


最終更新日 ( 2018/04/30 月曜日 10:09:42 JST )
 
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