平成二九年一〇月定例参禅会報告 プリント

今月の提唱

『正法眼蔵』「(後)心不可得」の巻(3)

img_0254.jpg-1.jpgおほよそ牆壁瓦礫にてある佛心あり。三世諸佛ともにこれを不可得にてありと證す。佛心にてある牆壁瓦礫のみあり。諸佛三世にこれを不可得なりと證す。いはんや山河大地にてある、不可得のみづからにてあるあり、草木風水なる不可得のすなはち心なるあり。また應無所住而生其心の不可得なるあり。また十方諸佛の一代の代にて八万法門をとく。不可得の心それかくのごとし。
また大證國師のとき、大耳三藏はるかに西天より到京せり。他心通をえたりと稱す。唐の肅宗皇帝ちなみに國師に命じて試驗せしむるに、三藏わづかに國師をみて、すみやかに礼拜して右にたつ。
國師つひにとふ、「なんぢ他心通をえたりやいなや」。
三藏まうす、「不敢」と。
國師いはく、「なんぢいふべし老僧いまいづれのところにかある」。
三藏まうす、「和尚はこれ一國の師なり、なんぞ西川にゆきて競渡のふねをみる」。
國師ややひさしくして再問す、「なんぢいふべし、老僧いまいづれのところにかある」。
三藏まうす、「和尚はこれ一國の師なり、なんぞ天津橋上にゆきて、猢猻を弄するをみる」。國師またとふ、「なんぢいふべし、老僧いまいづれのところにかある」。
三藏ややひさしくあれどもしることなし、みるところなし。
國師ちなみに叱していはく、「這野狐精、なんぢが他心通いづれのところにかある」。
三藏また祇對なし。
かくのごとくのことしらざればあしし、きかざればあやしみぬべし。佛祖と三藏と、ひとしかるべからず、天地懸隔なり。佛祖は佛法をあきらめてあり、三藏はいまだあきらめず。まことにそれ三藏は在俗も三藏なることあり、たとへば文華にところをえたらんがごとし。しかあればひろく竺漢の言音をあきらめてあるのみにあらず、他心通をも修得せりといへども、佛道の身心におきてはゆめにもいまだみざるゆゑに、佛祖の位に證せる國師にまみゆるには、すなはち勘破せらるるなり。


今月の所感

img_0251.jpg-1.jpg先月の「(後)心不可得」の巻の最後は、過去心不可得・現在心不可得・未来心不可得とは、生死去來であると述べられていましたが、今月の最初の箇所で過去心不可得・現在心不可得・未来心不可得とは、牆壁瓦礫であると述べられています。
ところで佛心が牆壁瓦礫であると最初に示されたのは南陽慧忠禅師です。南陽慧忠禅師はこの後すぐに大耳三藏がいかさまの仏法学者であることを見抜く件に登場してきます。
南陽慧忠禅師は唐の粛宗皇帝の師匠であったことから大證國師と称されていました。唐の都の洛陽に、インドから經・律・論の三藏をマスターし、しかも他人の心を見抜くことができる能力である他心通を身に付けていると称する大耳三藏がやってきました。粛宗皇帝は大證國師に、このインド僧の他心通が本物かどうか確かめさせました。すると大耳三藏は大證國師をちらっと見るや、早々に礼拝して國師の右側に立ちました。
そこで大證國師は大耳三藏に問う、「お前は他心通を得ていると聞いているが、本当に他心通の能力があるのか」と。
大耳三藏は、「さあ、どうですかね」と答えた。
大證國師が問う、「わしは今、どこにいるのか言ってみろ」と。
大耳三藏は、「和尚さまはこの国の國師でありながら、なんで四川の屈原の祭りで催されている競艇を見ているのですか」と答えた。
暫くしてから大證國師が再び大耳三藏に問うには、「わしは今、どこにいるのか言ってみろ」と。
大耳三藏は、「和尚さまはこの国の國師でありながら、なんで洛陽の天津橋に行って、猿が戯れているのを見ているのですか」と答えた。
さらに大證國師が、「わしは今、どこにいるのか言ってみろ」問うと、大耳三藏はしばらく考えていたけれども、大證國師がどこにいるのかわからず、見ることができなかった。
すると大證國師は大耳三藏を叱って言うには、「この人を誑かす似非坊主め、お前の他心通とやらは一体どこにあるのか」と。
大耳三藏は答えることができなかった。
このような大證國師と大耳三藏との話を知らないことはまずいことであり、聞いていないならば調べて、きちんと学んでおく必要がありますと道元さんは指摘されています。
大證國師は仏法を経典だけでなく、坐禅などの仏道修行を通じて体得されているのに対して、大耳三藏は経典を読んで理屈の上だけで仏法を理解したに過ぎず、本当の仏法を身に付けていなかったのです。このような大證國師と大耳三藏では天地ほどの隔たりがある事は明らかなことで、頭でしか仏法を理解していない大耳三藏が、仏法の真実を体験を通じて全身で受け止めている大證國師の前に出れば、たちまち見破られてしまうのだと道元さんは指摘されています。

今月の参禅会は台風21号が関東地区を襲撃したため、参加者はいつもより少ないようでした。また、坐禅中は坐禅堂を叩きつける雨音が聞こえてきたし、ご老師のご提唱も台風のせいか少し短いように思えました。茶話会も司会の杉浦さんが早く進めるようにネジを巻いたので、早々にお開きとなりました。台風に追い立てられた参禅会でした。


清水坐禅普及委員からのお知らせ

・11月1日発行の『広報あびこ』の「市民伝言板」コーナーに、東葛坐禅クラブの会員募集の記事が掲載されますのでご覧になり、周りの人にも勧めて下さい。

小畑代表幹事からのお知らせ

・12月3日に第35回成道会が行われます。徳山さんは第1回から参加されています。なお、成道会ではご老師との一問一答がありますので、質問を考えておいてください。仏教に関係ある質問ならば、どのようなことでも結構です。

ご老師からのお知らせ

・成道会を始めたころは大勢の方が参加されましたが、最近は参加される方が少ないようです。どうして参加者少なくなったのかはよくわかりませんが、一年の最後の行事ですし、来年の成道会は必ずしもあるとは限りません。是非多くの方が参加されることを望みます。

今月の司会者 杉浦上太郎
今月の参加者 25名
来月の司会者 小畑 二郎

最終更新日 ( 2018/04/30 月曜日 10:12:46 JST )
 
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