平成二六年八月定例参禅会報告 プリント

今月の提唱

『正法眼蔵』「佛道」の巻(7)

img_5617-1.jpg先師示衆云、近年祖師道癈、魔黨畜生多。頻頻擧五家門風、苦哉苦哉(先師示衆に云く、近年祖師道癈して、魔黨畜生多し。頻頻に五家の門風を擧す、苦哉苦哉)。
しかあればはかりしりぬ西天二十八代、東地二十二祖、いまだ五宗の家門を開演せざるなり。祖師とある祖師はみなかくのごとし。五宗を立して、各各の宗旨ありと稱ずるは、誑惑世間人のともがら、少聞薄解のたぐひなり。佛道におきて各各の道を自立せば、佛道いかでか今日にいたらん。迦葉も自立すべし、阿難も自立すべし。もし自立する道理を正道とせば、佛法はやく西天に滅しなまし。各各自立せん宗旨、たれかこれ慕古せん。各各に自立せん宗旨、たれか正邪を決擇せん。正邪いまだ決擇せずは、たれかこれを佛法なりとし、佛法にあらずとせん。この道理あきらめずは、佛道と稱じがたし。五宗の稱は、各各祖師の現在に立せるにあらず。五宗の祖師と稱ずる祖師、すでに圓寂ののち、あるひは門下の庸流、まなこいまだあきらかならず、あしいまだあゆまざるもの、父にとはず祖に違して立稱じきたるなり。そのむねあきらかなり、たれ人もしりぬべし。
大潙山大圓禪師は、百丈大智の子なり。百丈と同時に潙山に住す。いまだ佛法を潙仰宗と稱ずべしといはず。百丈もなんぢがときより潙山に住して潙仰宗と稱ずべしといはず。師と祖と稱ぜず、しるべし妄稱といふことを。たとひ宗號をほしきままにすといふとも、あながちに仰山をもとむべからず。自稱すべくは自稱すべし。自稱すべからざるによりて、前來も自稱せず、いまも自稱なし。曹谿宗といはず、南嶽宗といはず、江西宗といはず、百丈宗といはず。潙山にいたりて、曹谿にことなるべからず。曹谿よりもすぐるべからず、曹谿におよぶべからず。大潙の道取する一言半句、かならずしも仰山と一條拄杖兩人舁せず。宗の稱を立せんとき、潙山宗といふべし、大潙宗といふべし、潙仰宗と稱ずべき道理いまだあらず。潙仰宗と稱ずべくは、兩位の尊宿の在世に稱ずべし。在世に稱ずべからんを稱ぜざらんは、なにのさはりによりてか稱ぜざらん。すでに兩位の在世に稱ぜざるを、父祖の道を違して、潙仰宗と稱ずるは、不孝の兒孫なり。これ大潙禪師の本懷にあらず、仰山老人の素意にあらず。正師の正傳なし、邪黨の邪稱なることあきらけし。これを盡十方界に風聞することなかれ。

今月の所感

img_5613-1.jpg今月のご提唱の中に、「各各に自立せん宗旨、たれか正邪を決擇せん」という語句があります。この中の正と邪ですが、これはなかなか難しい問題です。一体何が正で、何が邪なのか。同じ事柄でも正となるか邪となるかは時と場所によって異なる場合が多々見受けられるからです。
例えば「正しい仏教」といった場合、何をもって正しい仏教となるのか。ご老師によれば、歴史的にみると、仏教の見方にも大きな変化があるそうです。明治維新で天皇制が前面に打ち出されたことにより、仏教は弾圧を受けることになりました。その後、明治政府のもとで設立された帝国大学では、仏教研究は印度哲学と呼称され、そこではヨーロッパで行われていた原始佛教研究が専ら導入されることになりました。原始佛教は今でも東南アジア諸国で弘法している南方上座部(小乘仏教)に色濃く反映されています。一方中国・朝鮮・日本などの東アジア諸国は大乗仏教圏ですので、原始佛教とは異なる点が多々あります。特に戒律に関する見解には大きな隔たりがあります。そこで戦前の印度哲学の学者からは、大乗仏教は堕落した宗教であり、特に江戸時代以降の日本仏教は邪な宗教であるとの見解が示されていたそうです。
しかし、最近の印度哲学の学者の中には、日本仏教の死者への向き合い方に学ぶべき点が多いとして、日本仏教のあり方を再評価するようになって来たそうです。亡くなられた方がいたからこそ、今の自分たちが存在することができるのだという見解に立てば、死者への供養を重視する日本仏教は、非常に意義があることになってきます。
物事に対する正と邪は一概には決められないのです。民主主義社会ではともすれば正・邪を多数決で決める場合があります。少数意見の中にこそ真理があるのかもしれません。ですから何故そのような少数意見が出されるのかを徹底的に話し合う必要があるのです。ご老師も事あるごとに、少数意見を重視すべきだと口酸っぱく訴えられています。
「正邪の決擇」は世論に流されることなく、慎重に判断することが大切なのです。


小畑代表幹事からのお知らせ

・8月16日(土)の龍泉院施食会には14名の方がお手伝いに参加され、無事圓成しました。
・8月9日(土)の自由参禅の時には、坐禅堂の周りの草取りを行い、お陰様で大変綺麗になりました。
・ご老師が制定された「常規」の第1条には、「雲堂は公開(くがい)の道場にして、修道者には常に開放を惜しまず」とあります。この精神を実現するため坐禅普及委員会が設置されました。8月27日(水)には千葉県生涯大学福祉科卒業生34期会OB会の方々が坐禅体験に来られますので、委員会もここで普及体験を致します。

御老師からのお知らせ

・施食会には14名の方がお手伝いくださり有難うございました。また前日には炎天下の中、汗だくになりながら駐車場の後片付けをなされた方が2名いらっしゃいました。
・「禅を聞く会」が10月1日(水)13時より、有楽町朝日ホールで行われます。講師は愛知專門尼僧堂 堂長 青山俊董 老師

今月の司会者 加藤 孝
来月の司会者 坂牧 郁子
今月の参加者 28名

最終更新日 ( 2015/02/24 火曜日 08:56:05 JST )
 
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